2016年6月、可部線の廃線区間を探る旅の続きからなのですが、沿線
の中間駅であった加計駅の跡地に到着しております。
この日(6月4日)と前日は、ココに保存されてるキハ28も復活運転を行う
という事で、ソレに合わせて予定を組んできたのですが、お天気も上々。
駐車場もコレだけ広いのに結構埋まってるし、警備員さんも出てました。
そのキハ28は後から詳しくやるとして、このような車両も走ってました。
…DD16と14系客車は若桜鉄道、「スーパーはくと」は智頭急行ですな。
どちらも鳥取県の会社ですが、こちらのオリジナルなのか出張サービス
なのかは不明です。
予想外の賑わいに些か戸惑っておりますが、必然的にメインの出し物に
なっちゃってるキハ28の保存車を見て行きましょう。
加計駅そのものは、先述の島式ホームの一部を残して撤去&再開発
されておりますが、駅から三段峡方向にある線路が、目測で100m少し
残されており、キハ28はココを走ります。
片運転台の車両なので、帰りは後進で戻ってくる恰好になりますが、
保線用の小型機関車も一緒に保存されてるので、場合によっては
帰りはコレで牽引する事もあるそうな。
些かの経年劣化は仕方ナイですが、今でも見られる「山口色」ですね。
そもそも可部線は、基本的にはキハ40系などで運行されてたので、
キハ58系が入るのは臨時列車の場合に限られたそうです。…ソレで
かどうか、方向幕は「臨時」。まぁコレが走る事自体が臨時かな。
車番はキハ28の2394号。
キハ58系のうち、エンジンが1基のみ
のタイプです(58は2基)。
奇しくも安野駅のキハ58554号と同時期
の長編成対応型。後に冷房用の発電
エンジンを積んだ事により、元の製造
番号に2000を加えた番号になります。
…いすみ鉄道のアレと同じですね。
サボは色々あって適宜に取り換えてる
ようです。上記の「三段峡観光号」は、
行楽時期の定番の臨時快速でした。
国鉄時代の時刻表を見るに、やはり
基本的には電化してる可部までが
電車で、以遠は乗り換えのパターン
が多いものの、広島からの直通も、
日に3往復程度見られました。
列車名サボはコレまた適当な感じですが、「だいせん」は中学生の頃に
一度だけ20系充当の夜行に乗った事があります。
…昼夜両方が存在した急行列車なので、昼行は当然にキハ58系でした。
…私の経験上こういうイベント列車の場合、手持ちのサボを持ち込んで
係の人に頼めば、付けさせて貰えるケースが多いんですが、今回はソコ
まで発想しなかったですね(…訊いてナイので実際の可否は不明です)。
では折角ですから、実際に走る気動車に乗せて頂く事にしましょうか。
さて加計駅跡地のキハ28ですが、アレに乗るのはどぅしたらイイのか?
近くに居たスタッフさんに訊ねる所から始めます。
車両の近くにあったテントで切符を買います。
…硬券の乗車券に似てますが「1日会員」という身分の証明証?
300円で何度でも乗る事が出来ると。
コノ辺は吉ヶ原駅の片上鉄道保存会と同じような感じでしょうか?
ついでの事に寄付がてら、またポストカードを買いました。
…手作り感溢れまくりのホームから
車内に入ると、国鉄車両独特の消毒
だか何だかよく分からないアノ香り
に包まれました。
子供の頃は日常が近鉄だから、国鉄
は「より遠くへ行く乗り物」であり、
あの香りを嗅ぐと「旅に出るんだなー」
と実感したモノです。ぇ、分からない?
こちらの車両も、地元の物好きな…
ぃゃ熱心なボランティア保存会の
皆さんによって維持されおります。
可部線の廃止とともに自治体に無償
譲渡されたモノで、半年に2日間
が1度…つまり年間4日間に限って
復活運転が行われてるそうな。
勿論ソレ以外にも、車両の整備や敷地
の草刈りなどの作業もあるでしょう。
…後でも紹介しますが、やはり復活運転は「晴れ舞台」という事なのか
皆さんの「なりきり」っぷりがスゴかったですよ。
車内の番号表記は、コノ世代の気動車にありがちな「直書き」です。
…確かいすみ鉄道の同型車両もそうでしたね。製造会社のプレート
は無くなってましたが、1965年の帝国車両製だそうな。
JR西日本の注意書きステッカーは、まだソレほど古く感じません。
トイレの使用知らせ灯は、閉鎖してあるので点灯したままでした。
車内はセミクロス化されてない、オリジナルの「全部クロスシート仕様」。
…末期に於いては、逆にこっちの方が珍かったかも知れません。
モケットが青じゃないのが画竜点睛を欠いておりますが…贅沢言うな?
急行型だから、窓側にも肘掛けがあるタイプです。
物珍しさで見に来る子供さんの記念写真用なのか保存会の方々の趣味
なのか、国鉄の制服や制帽も多数用意されておりました。
…ソコまで気が回らなかったけど、知ってれば自前のを持ってきたのに。
キハ28(と58)ってのは、運転席側の端っこにS席という端数の2人掛け
が存在しますが、ソコだけが物置き状態になっており、かつての可部線
を映したDVDが放映されています。
…背後にある殺虫剤が、普段のココの環境を物語ってる気がしますよ。
広告スペースには、素朴なタッチのイラストが入ってました。
最近「お絵描き会」に出入りするようになったので興味があるのですが、
こんな感じでもアリだわな。…後から紹介しますが、コレに描いてある
車庫のような建物が、普段キハ28が格納されているやつなんです。
そしていよいよ運転席。…モックアップというか廃車体から外したような
展示品は、東能代駅で見た事がありますが、今回は本物です。
オーソドックスな形状で珍しいモノではありませんが、好きな車種だけに
ちょっと感動しますよね。
列車無線の切り替え表が残ってますが、山陽本線も山陰本線も、アレ
だけ長いのに全線一括なのか?
…という感じで見せて貰ってたら、保存会の方が「座ってイイですよ」と。
ぇ、ホントにいいんですか?エンジン掛かってますけど!…という事で
着席。やはり基本姿勢は、左手がマスコンで右手がブレーキです。
各地の鉄道会社で体験運転が盛んな昨今であり、私も何度か参加した
事がありますが、国鉄車両ってナイよね。あー動かしてみたい!
…ご丁寧にも国鉄制帽の貸与もアリです。しかし5号ですか。
どぅ見ても「乗っかってるだけ」。顔の大きさが強調されてしまいます。
アタマの大きい私は理想なら1号か2号、最低でも3号でないとダメなの
ですが…つくづく「自分の持ってくりゃ良かった」ですよね。
まぁ折角のお計らいなので、贅沢は言っちゃダメでしょう。シャッターも
押して頂きましたし。…ソレらしく見えますか?
ともあれ発車時刻になりましたので、本職の運転士さんと交代して見学
です。…2回分ソノ場に居たので、外からの見た目と混ぜて報告して参り
ますが、概ね1時間に1往復の運転のようでした。
鉄道が無くなった筈の山間の田舎町に、キハの汽笛が響きます。
…と言うか停車中もエンジンは掛かっており、運転席に座ると「汽笛は
鳴らし放題」のようです。ココに来た時からカナリ聴いておりましたよ。
若干壊れ気味な気動車チャイムとともに始まる車内放送とか、こんな
短距離なのに検札が来るとか…一々芸が細かくて楽しいですね。
…ソレにしても、先述しましたが保存会の皆さんの「なりきり」っぷりが
スゴいのです。私だって、近所にこのような施設があれば絶対に参加
してる所なんですが。
では1両だけのキハ28で、短いながらも列車旅に出発と参りましょう。
走る距離は目測で100m少しでしょうか?よくある体験運転と似たような
感じです。奥手に見える車庫のような建物を過ぎて少し先までね。
クーラーは効いてますが、殆どの窓が空け放たれており、初夏のいい風
が入ってきます。元々加速の遅い車両だし、速度もソレほど出ないの
ですが、「あー、頑張って走ってるなー。」という感じ。
…片運転台車の単行なので些かの違和感はありますが、国鉄時代
には気動車の配置転換で、このような単独自走が見られたそうな。
元の本線は撤去されて敷地内の道路(右の茶色い部分)になっており、
車両が走るのは留置線なんだそうです。だから車庫があると。
廃止から14年、小さな子供さんだとリアルに知らないだろうし、コノ辺
の環境だとバスや自家用車での移動が多いんでしょう。物珍しさに
大喜びの光景が各所で見られました。
でコノ車庫。恐らく普段は、ココにキハ28が格納されてるんでしょう。
やはり雨ざらしで置いてあるよりは保存状態がイイ感じです。
天井に大きな煙抜きのフードがあるので、元は蒸気機関車を入れてたの
かも知れません。
車庫内を通過すると「音が籠る」ので、サービスがてらに汽笛が鳴ります。
…ぁ、貫通幌が捨ててあるぞ。要らないのだったら、ドコかへ売って資金
の足しにするという手段もありそうですが。
乗ってても外から見てても、実に楽しい復活運転ですね。キハ28の単行
列車が初夏の爽やかな青空の下を、重苦しい気動車が線路を軋ませつつ
徐行しておるのですが…シュールな光景でもあります。
先述の通りキハ28が走るのは、加計駅の留置線の部分です。
元の本線は、現在はソノ横にある敷地内の道路に変わっておりました。
更に先には、鉄橋の遺構だけが残っておりました。…昔はアノ山を
越えて、もっと線路が続いてたのでしょう。
留置線の方は、草に埋もれた感じで車止めと停止目標が見えますね。
キハ28はココまで来ます。…ブレーキを軋ませて停止。
山肌をバックに上がる排気ガスの煙が、蒸気機関車をリアルで知らない
世代にとっては懐かしい風景でもあるのですが私にとっては、やはり
微妙に非日常と言うか、旅先で見た風景なんです。
昔の気動車って、駅のホームでアイドリングが高めなだけで、ウルサくて
会話が出来なかったよな。
…そんな事を思い出しつつ、程なくバックで元の位置に戻ります。
貫通扉付近に居る保存会の方が、運転席とトランシーバーで連絡を取り
つつ、慎重に定位置に着けます。…例の「やわやわ」が聞けましたよ。
という事で短い距離ではありましたが、滅多に乗れないオリジナル状態
のキハ28が体験出来ました。…開催日の日曜に合わせて、ワザワザ
遠くまで来た甲斐がありましたよ。
では見る所も一段落したので昼食。ご当地で捕れるらしい、鮎の塩焼き
が美味そうなのでコレにしましょう。…まだレンタカーが残ってるので、
ビールが飲めないのが残念。サイダーで我慢します。
店番のおじさんに写真を撮ってイイか訊いたら「インスタ映えするように
撮ってね。」ですって!
…何だか時代は変わったなあ。でもすいません、私はアレやってないの。
なかなかに見所が多かった可部線の廃止区間ですが、広島方面へ戻る
のに最寄りの高速入口まで行こうとしたら、成り行きでもぅ1箇所見つけ
てしまいました。
加計から更に奥の三段峡方向へ向かって走ってると、明らかに鉄建公団
が作った高架の線路が見えてきました。
…そして築堤の上に、明らかに駅と思しき構造物がありますね。
道路から駅まで長い階段が続いて
おりますが、特に閉鎖されてる感じ
でもナイので登ってみます。
「きさかえき」と書いてありますか。
調べてみると、加計から三段峡方向
へ向かって次の「木坂」という駅
だったようです。
この区間が延長されたのが1969年、
廃止が2003年だから、駅として機能
してたのは34年間という事ですね。
鉄道の路線や駅としては短命でしょう。…やはりゴリ押し(地元の要望
も幾らかあった筈ではありますが)で作ったものの、採算が取れない
のは、ちょっと考えれば分かる話?そうは行かない事情もあったのかな。
ホームや待合室は、コレまた撤去も
されずに残っています。
さりとて、何かに再利用されてるワケ
でもナイ…完全放置ですね。
…遊佐未森さんの曲に「夏草の線路」
というのがありますが、コレは埋もれ
すぎでしょう。
抒情もヘッタクレもないと言うか…。
一応、レールは外してありましたが。
JRのロゴも現在のモノと変わらないので、ココもそんなに古い印象は
ありません。ワンマン運転用のミラーなども今と同じ感覚ですね。
…せめてコノぐらい、ドコかで再利用出来ないモノか?
恐らく三段峡まで、他にもこんな感じで駅が残ってる事と思われますが、
キリがないのでココらで切り上げて、高速道路を経由して可部方面へ
戻る事にしました。
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