2019年11月の事、あいの風とやま鉄道の「一万三千尺物語」に乗って
きました。…JR西日本エリアの観光列車はほぼ制覇してしまったので、
新たなネタを求めて周辺地域へ出て行く感じです。
富山駅に着くと、同社の改札内での乗車受付が始まっております。
私が乗るのは1100発の1号「富山湾鮨コース」です。
富山を出て北陸本線を北上し、新潟県境に近い泊で折り返してまた
富山に戻ってくる、約2時間の旅ですよ。
…午後便の2号は懐石料理が出るコースで時間も少し長いんですが、
富山に戻ってくるのが夕方なので、日帰りするには些か面倒な時間割
になってしまいます。
今は観光列車の予約を取ろうとしたら、まず調べるのはその鉄道会社
のホームページでしょう。私もソノ通りにしたら、予約がインターネットで
出来てしまう事が分かりました。
しかもその場で席の指定も出来るし、クレジットカードで支払いも出来て
しまう。…カナリ今時のシステムですが、電話したり銀行振込に行ったり
しないで済むので非常にラクな話です。
そして乗車予定日の5日ほど前に、予約票やパンフレットなどが郵送
されてきました。乗車日の日付が入った記念館乗車証が同封されてる
のは些かフライング気味ではありますが、コレで改札を入るんです。
1040頃にホームに入線するという事で、先に実景撮影などを済ませて
待ってますと、「一万三千尺物語」が入ってきました。
…国鉄形式を改造した車両なのは一目瞭然です。3両編成なので
しなの鉄道の「ろくもん」に似た雰囲気ですね。
形式としては413系です。国鉄末期に余剰車だった交直両用の急行型
電車を車体更新して作られた車両です。車種としては近郊型ですが、
扉は両端に近い箇所に片側で2箇所というスタイルです。
JR移管後も残ってた車両で、あいの風とやま鉄道に譲渡された中の
1編成で、521系の登場によって引退間近だった物を、1億5000万円
かけて観光列車に改造したそうです。
車両の前後にはオリジナルのヘッドマークが付きます。…方向幕の
部分はJR期に埋められた状態のまま、ロゴが入っておりました。
…時間があるので反対側のホームへも回ってみます。
昨今のラッピング技術の発達で、複雑なデザインを車両に転写する事
が可能になり、「一万三千尺物語」も富山県の山と海をイメージした
お洒落なデザインになってますね。
外観の記録が終わりましたので、再び発車ホームへ戻ってきました。
入線から発車まで20分ほど時間があるので、スタッフの方がお客さん
に声を掛けて記念写真を撮ったりしています。
ソコソコ値が張る観光列車なので、客層としては やはり高年齢層が
多く、なんとかツーリズムの団体さんも20名ほど乗るようでした。
…こう言う場合って、添乗員さんも同じ料理が出るんですかね?
一般的な積み込み弁当や団体食の場合、ソノ分はサービス(無料に)
するのが通例ですが、ココの料理は結構高そうですよ。
交直両用の電車なので乗降口にはステップがありますが、内装を
いじった時にココまで埋めてしまった(恐らく車椅子用のスロープが
入ってる)ので、停車駅では踏み台が用意されます。
…とは言え、また実際にはドアが開いて最初に踏み込んだ一歩で、
無人の車内を撮りました。反対側のホームなんか後回しで大丈夫。
私が乗るのは3号車。海側に4名席と山側に2名席のテーブルが
並んでいる車両です。
天井などの内装には御当地の「氷見杉」が使われてるそうですが、
全部を木製にすると不燃化の基準を満たさなくなるので、薄く加工
したソレを従来品の内装に貼り付けてあるのだと思われます。
乗務員室の後ろにはクロークが設けられておりました。
私の席は2名掛けのテーブル席です。申し込みサイトでリアルタイム
に席の埋まり具合いを見て、好きな席を選ぶ事が出来ました。
コレは便利。ってか全社コノようにして欲しいわ。…まぁ小さな会社
だからこそ出来るサービスなのでしょうが。
幸いな事に相席者は居ないようです。
…同じルートを往復するから帰りは進行方向が逆になるワケで、
空いてるなら帰りは反対側に座ればいいわな。
発車時点では3号車が先頭なので、後方になる2号車に向かって
歩いてみます。貫通幌を越えた所に観光列車としてはお馴染みの、
特産品などを展示したコーナーが設けられていました。
花笠はフックに掛けてあるだけだっので、外して被る事は可能かも
知れません。…私1人でやったって仕方ナイから被りませんけどね。
Wi-Fiの設備がある事を示すステッカーが貼ってありますが、流石に
観光列車ではパソコンを広げての作業をする気は起りません。
そんな感じて引き続き2号車を見て行きましょう。3両編成なので
中間車に当たりますね。
2号車には客席は無く、車内で提供されるお料理を用意する厨房と、
販売カウンターや記念撮影コーナーなどで占められています。
…私は日本酒には詳しくナイですが、カナリの種類の地酒が用意
されているようですね。
厨房には窓があって、調理の様子を見る事が出来ます。…ココを
塞いでしまうと料理人の皆さんも海側の景色しか見る事が出来ず、
手が空いた時に退屈でしょう。
この「富山湾鮨コース」に関しては、握り寿司が実際にココで作られる
のだそうな。他所で調理された弁当スタイルの物を積み込むケースが
多い中では特異な例かも知れません。
…通る度に料理人のおばさんが矢鱈と手を振るので、許可を頂いた
上でモザイクなしで掲載させて頂く事にしました。
続いて後方の1号車に入ります。…外から見て大きなロゴマークで
窓が無かった部分には、トイレと洗面所がありました。
乗降口部分とはオリジナルデザインの暖簾で仕切られています。
改造元の車両で言うとボックス席2列分なので、カナリ広く取って
ありますね。トイレはバリアフリー対応ですが、内装はシンプルです。
1号車の山側は窓に向いたカウンター席が並んでいます。一人旅
ならこっちの方を好む方もあるかも知れません。
…ココだけ帰路に撮ったので、窓の外の景色が微妙に違うのと、
散らかったテーブルの上が写らないアングルになっております。
そんな感じで「一万三千尺物語」は定刻に富山駅を発車しました。
あいの風とやま鉄道の車両基地は、駅の東側にある富山貨物駅に
隣接しており、職員の皆さんが横断幕でお見送り。最近はコノ手の
演出も増えましたね。
ではまず新潟県境に近い泊まで、片道約1時間の旅です。
自席に戻って色々と確認してみましょう。
…左上の画像は事前に送られてきた記念乗車証と、富山駅の受付で
貰った席の案内などです。そしてテーブルにはパンフレットや絵ハガキ
などが配られていました(左下)。
お料理のセッティングとしては箸や醤油皿の他に御当地のミネラル
ウォーターがあり、続いて食前の飲み物が配られます。
…コレも申し込みサイトのフォームから種類を選択するスタイルに
なってまして、私は食前酒を注文してありました。
実に現代風で合理的ですね。インターネットが普及した昨今、記録が
残らない「電話のみ」の申し込み方法ではどうも不安です。
暫く走ると進行方向の右手に立山連峰、左手に富山湾の両方が
見れる区間になります。当日は11月なのに暑いぐらいのお天気で、
双方ともキレイに見えています。…ココまでの状況は稀だそうな。
列車名の「一万三千尺」はメートル換算だと約4000m。山の標高の
3000mと海の水深の1000mを足した数値なんだそうですよ。
観光案内は男性の案内人さんが、ワイヤレスマイクを付けて車内を
行き来しながら行われます。
各地の観光列車に乗った経験上、女性のアテンダントさんが放送
するケースが多かったワケですが、バスガイドさん口調で定型文を
読んでる感じのモノよりは「笑い重視」な感じで面白いですね。
…自分も似たような仕事をするので、とても参考になりました。
そうこうするうち、お料理が運ばれてきました。…小鉢が3品入った
箱と握り寿司が8カン入った箱が2段重ねになっています。
富山湾で採れた食材がメインに使われてるという説明ですが、気持ち
が先走ってよく聞いてませんでした。…見た目もイイし当然に美味い。
個人的にはココまで豪華な食事をするのは滅多にナイ事であり、大抵
が観光列車の車内で提供される物なんですが、今回も当たりですわ。
お料理には茶碗蒸と椀物が付属します。…私は普段は早食いな方
なんですが、観光案内を聴きながらの食事だとどうもペースが落ち
ますね。まだ時間があるのでゆっくりで構わないでしょうが。
飲物はテーブルでも注文出来ますし、2号車の販売カウンターで買う
事も出来ます。…私は地酒には疎い&酔いが回りすぎるので、ココ
はまた地ビールにしておきましょう。
ちなみに、お天気が良すぎてテーブル上にも濃い影が出来るので、
風景を撮る時以外はブラインドを降ろしています。
2時間少しの事ではありますが、美味い料理とビールを楽しみながら
旅が出来る。…昔ながらの食堂車は殆ど無くなりましたが、イイ時代
になったのかも知れませんね。
運転区間の中で最も長い黒部川橋梁の上では、やはり観光列車の
お約束である「ビュースポットにおける一旦停車」がありました。
丁度上りの普通電車と交換するタイミングでした。
例によって私は、運転席のスタフを覗いてみたんですが、一般的な物
と比べて矢鱈と詳しい説明が付随した物になっています。
…分岐器を通過する時の制限速度が通常より遅いのは何故だ?
もしかしたらテーブル上の料理や飲み物に対して、揺れを抑えるため
の措置なのかも知れません。
…この地点からも立山連峰と富山湾がキレイに見えました。
黒部川は河口に近い所なので川幅が広く、河原の砂利とのコントラスト
も美しいですね。
そして折り返し駅となる泊に到着です。
…国鉄タイプの2面3線の駅ですが、「一万三千尺物語」が到着する
筈の2番線ホームに、何やら別の列車が停まってますね。
えちごトキめき鉄道の直江津方面行きの気動車列車でした。
そのため場内信号の手前で一旦停車があります。…そしてよく見ると
向かい側の1番線で旗を振って、駅員さんが出迎えてくれています。
北陸新幹線の開通後、平行在来線は殆どの区間で第三セクター化
されたワケですが、基本的には県境に近い駅で会社が変わるので、
あいの風とやま鉄道とえちごトキめき鉄道鉄道の境界駅は2つ先の
市振駅になります。
しかし運転系統がココで分かれるので、えちごトキめき鉄道の列車が
ココまで乗り入れてくるのだそうな。そして一部の直通列車を除いて、
同じ2番線ホームに列車を着けて乗り換えの便宜を図ってるんです。
異なる会社の2本の列車が同じホームに着くのは全国的にも珍しい
のだそうで、コレは私も知りませんでした。考えてみれば第三セクター
化されてから乗るのは初めての事でした。
だから実質的な感覚としては、ココから先がえちごトキめき鉄道という
事になるんでしょうか?各種の案内を見る限りソノように強調されてる
気がしました。
…まぁ「一万三千尺物語」は観光列車なので、ココでの乗降は想定
されておらず、15分余りの停車の後は乗客全員が富山まで引き返す
事になるんですか。
ココから運転系統が変わるので、乗り入れてきたえちごトキめき鉄道
の気動車列車が待機していました。
…調べた所、同社の略称は「トキてつ」と言うそうな。えちぜん鉄道が
先に「えちてつ」を持って行っちゃったからなのでしょうか?
元はJR北陸本線なので当然に電化されていますが、糸魚川の先で
デッドセクションを挟むので、高価な交直両用電車の導入を諦めた
のか、この区間のオリジナル車両は全て気動車です。
JR姫新線で見られるキハ122型と同タイプのET122型ですな。
…「ET」と聞いて映画に出て来た宇宙人を想像するのは古い世代だ。
15分ほどの時間があるので、跨線橋を渡って駅舎を見にきました。
…ココは日中の時間帯に限られますが窓口営業を行っています。
発車案内は大型のモニターなので、立山連峰をイメージしたような
山脈のイラストが添えられています。
先述の通り、一部の直通列車を除く双方向の折り返し列車が同じ
2番線から発着するので便利ですね。…国鉄時代の名残りでホーム
が無駄に長い事を逆手に取ったサービスでしょう。
コノ辺りはヒスイの産地だという事で、えちごトキめき鉄道の同区間
については「日本海ひすいライン」という路線愛称が付けられており、
駅舎内にはヒスイの原石?が飾られていました。
むき出しで展示して盗まれないの?とは思うんですが、重さが160kg
あるのか。…手作業では些か難しいのかな?
そんな感じで発車時刻となりましたので「一万三千尺物語」は富山に
向かって引き返します。…観光列車で同じルートを往復するものは
逆に珍しいんではナイでしょうか?
復路の車内では食後のデザートとして、和菓子とコーヒーが出ました。
飲み終えた地ビールの空き缶は、やはり持って帰りたいので下げられ
そうなのを断ったんですが、流石に「洗って包みましょう」とはならず、
乗降口付近にあった傘用の袋に、タテに詰めてみました。
…アレは「四国まんなか千年ものがたり」特有のサービスだったよう
ですが、私には過剰すぎる気がするのでコレで充分です。
ココで「あっちはあんなサービスがあったぞ」とか言い出すと老害だな。
往路は泊までノンストップで走った「一万三千尺物語」でしたが、復路は
途中で魚津駅に停車するようです。
…ココも客扱いは行わず、駅を軽く見学する程度なのですが。
北陸新幹線の開業までは特急停車駅だったのが、一気にローカル化
した例の1つでしょう。そもそも新幹線はコノ辺りでは内陸部をトンネル
で突っ切っており、魚津に駅は設けられませんでしたし。
…そこそこ有名な町だとは思うんですが、一抹の寂しさを感じました。
魚津市で有名なのはホタルイカと蜃気楼でしょう。…イカはともかく、
蜃気楼はビジュアル的に目立つのでよく話題になる気がします。
魚津市の蜃気楼は春から夏にかけて、気温や風向きなどの条件が
整うと見えるようで、魚津から富山湾を挟んだ対岸の岩瀬浜辺りの
街並みが浮いたり伸びたり、又は反転したりして現れるのだそうな。
自然現象なので同じ物は二度とは見れないそうです。
…そうなれば定点観測して色々と写真に撮る人も出てくるのでしょう。
駅には何枚ものパネル写真が展示されています。
しかし、やはり「見に行かないと見れない物」でしょうから、私はまだ
実際に見た事はありません。…てか対岸の風景だとは知りません
でした。こっち側の景色がドコかに反射するイメージがありましたよ。
駅に貼られた絵は魚津市のゆるキャラ、「ミラたん」。
…「蜃気楼=ミラージュ」から付けられた名前だそうな。可愛らしい
風体ですが性別は不明なんだそうです。
そして富山湾の魚津付近で、もう
一つ有名な埋没林の根っ子も展示
されています。
…確か古代の原始林が地殻変動で
そのまま海に沈んでしまった物だった
と記憶しておりますが。
僅かな停車時間で最低限の事だ
とは思いますが、魚津市の観光の
基礎知識が出来てしまいました。
魚津を発車すると最終区間になる
ので、お土産つきプランの皆さんに
「オリジナルの富山みやげ」なる物
が配られます。
…ぁ、私は「なし」の方を選んだので
貰えません。差額は2,000円ですが
内容が分からない福袋みたいな物は
あまり好きではナイんです。
「お土産なし」のプランでもポストカードやクリアファイルが貰えました。
…最近は自筆で手紙を書く機会が減ったので、ポストカードも各地で
貰い続けてると溜まる一方なんですが、何かイイ活用法はナイかね?
「旅ノート」という物が同封されてるので、ココに絵でも描けるかな?と
思ったんですが、当日の行路や同行者などを記録する忘備録みたいな、
ホントに「ノート」なんですね。てかもぅ描いてる時間ナイし。
…記念スタンプを捺す場所があったので、珍しく捺してきました。
そんな感じで約2時間、定刻に富山駅まで戻って「一万三千尺物語」
の旅はココまでです。今回も美味しい料理とキレイな景色を楽しめて
いい一日でした。…一挙両得に楽しめる観光列車の旅はいいもんだ。
泊駅で少しだけ垣間見たえちごトキめき鉄道ですが、糸魚川から
直江津あたりの区間はコレまた駅ノート設置駅の多い所なので、
いつかコノ辺も旅して、この場で報告出来るのを楽しみにしています。
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