2016年4月、初の「自分で申し込んだ体験運転」という事で一畑電車です。
松江しんじ湖温泉から電車に乗って、雲州平田駅に到着しました。
今では各地で盛んになってる鉄道車両の体験運転ですが、ココが結構
老舗と言うか、早い時期から実施されてて知ってたのと、実施日が
毎週金・土・日の3日間あるという事で、以前から狙ってたのです。
…この3日間だと、金曜が一番空いてそうなのは誰にでも想像出来る
事、勿論私も金曜に当たるように計画を組んで参りました。
程なくしてアテンダントのお姉さんが現れ、点呼のあとに参加証と手袋
が渡されます。で、体験運転後に発行される証明書の写真撮影を行い、
案内されて会場へと向かいました。
…なかなか個性的な字ですね。普通に見るなら女性らしい可愛らしさ
を感じる所ですが、もう少しカッコよく書いて下さいよ。
車庫内の踏切を突っ切って行くと、先程の「しまねっこ号」と、
たかやっぴー(たかやすさん)が大好きな南海ズームカーが居ました。
体験運転に使用されるのは、デハニ50型の53号車。 車庫内の
一番外側に、デハニ専用の車庫と約150mの専用の線路があります。
で、ソノ横にあるプレハブで、まずは講習会を受けるんですよ。
長らく行われてるだけに、コノ辺の準備も万端に整ってる感じでした。
資料なのか単なる廃品なのか、よく分からん鉄道グッズが沢山ある
教室ですが、コノ日の参加者は私と、キッズプランで参加したYくんという
5歳の男の子…その保護者として父ちゃん母ちゃん爺ちゃん婆ちゃん
の4名が付いてきてます。
…の2組だけ!やっぱり金曜日を選んだ効果は絶大ですね。
しかもYくんのお父さんにハナシを訊くと、「昨日に申し込んだ」との事。
…じゃあコノ人たちが居なかったら、私だけの貸し切りだったのか?
ともあれ、まずは講習を聴いて電車の仕組みを勉強する事にしましょう。
…5歳児のYくんには難しい内容なので、「好きな事しててイイよ」って
お絵描き帳が与えられておりますが。
右の画像の大きな金属部品は、抵抗器の中に入ってる「抵抗」の部分。
…全くニクロム線みたいな格好をしてて笑えますね、2つ持ってきたら
食パンとか焼けそう。
こっちがブレーキシュー。…車輪を挟んで動きを止めるアレです。
大きな方が、錆びてますが新品。小さい方が使用限界を超えて外された
モノ。使ってるうちに、こんなに磨り減ってしまうという見本でした。
やはり電車の運転というのは、そのブレーキ操作が一番難しいという
事で、コレまた廃車体から外したようなブレーキ弁で操作の練習。
デハニ50の体験運転の先輩であるたかやすさんから「独特で難しいよ」
というハナシは聞いておりますが、果たして上手く行くもんでしょうか?
そんな感じで一通りの講習を終え、続いては車庫内を案内して頂く
事になっております。
映画の「Railways」でも登場した検修工場ですね。…コノ日は先代の
「しまねっこ号」が、検査のために入庫しておりました。
…たかやすさんが大好きな元南海ズームカーの3000系。
後日「あと1本残ってましたよ」と報告したら「あと1本しか残ってナイ
んです!」と返されました。…名車が段々と淘汰されて行く時代ですな。
そして、コレまた映画にも登場した軌道自転車の体験。
本来はペダルを反対向きに漕ぐとバックするんですが、何故か機能
せず(普通の自転車と同じ感じ)押して戻す羽目になったりして…。
珍しいモノが色々と見れる車庫見学は、まだまだ続きます。…当日は
ホントにイイお天気で良かったです。
映画「Railways」にも登場した、構内の洗車場です。
主演の中井貴一さんが、同僚の宮田くん(三浦貴大さん)と語り合う
シーンとか、ポスターやDVDのパッケージにもなった所ですね。
実際は大人の背丈ほどの高さがあり、Yくんは匍匐前進で進んで
おりますが…
ココでアテンダントのお姉さんから
「記念写真どうですか?」という事に
なり、座る位置とか目線の方向まで
指示されて撮って貰いました。
…んー、最初は「こんな感じ?」とか
思ったんですが、見れば見るほど
違いますよね。手は組むんじゃなく、
両脇の板の所に添える感じで下ろ
すべきでした。
…てか、どうしても中井貴一さんを基準に考えて私が太すぎるのです。
ともあれ次のスポット。枚数の都合で割愛しましたが、講師の先生が
運転るするデハニ50に乗って、コースの終点側へ移動しました。
続いては、保線区の事務所として使われていた古い倉庫を見学。
…ココは映画の劇中では、乗務員の休憩室として登場しました。
映画撮影時のスナップ写真やら、古い備品などが雑然と…展示されて
るんだか単に置いてあるだけなのか、微妙な所ではあります。
しかしココの一連の展示って「事前に映画を見て来てる」事を前提と
してますよね。やはり参加者の殆どがそうなんでしょうか?
そしてコレは私も知らなかったのですが、コノ映画は当初「BATADEN」
というタイトルで企画されてたようです。…貴重なポスターがありました。
更に奥にあったのが、コノ駅の伝言板風の黒板なんですが、映画公開時
に監督や主要キャストの皆さんが、寄せ書きしたモノです。
…チョーク書きなので、消えないようにアクリルで保護してありますが。
以前に来た時、電鉄出雲市駅に飾られてたんですが、写真を撮り損ねて
「後で見に行こう」と思ってたモノなんですよ。
展示期間が終ってココに保管されてたようです。丁度よかったね。
…ぁ、そろそろお昼ですか。
初心者向けの1日コースには、このような
お弁当が支給されます。…案内に「昼食つき」
とはあったものの、何が出るのか非常に楽しみ
にしておりました。
…バタ電の弁当だから「バタ弁」なんですね。
包装紙もナイスなデザインです。
箸袋にある一畑マークからして、系列のお店で
作ってるんでしょうか?今日はワザワザ私1人
のためにありがとうございました。
…まだ時間がありますので、ソノ辺を散歩してみましょう。
構内(線路)を横切るには、係の人を呼んで一緒に行って貰う必要が
ありますが、反対側の道路から外へ出るのは自由でしょ。
お天気のイイ4月半ばの事でしたから、菜の花がキレイでした。
ぐるっと回って道路の踏切を迂回すれば、駅舎側にも出られます。
小さな私鉄の車庫って、ノンビリした雰囲気の所が多くて楽しいね。
そんな感じでようやく時間となり、体験運転の専用車庫へ向かいます。
ドアを固定するアイテムが吊り革ってのがイイじゃないですか。
まずは床下機器の説明からですが、ココでは
やはりブレーキ装置を主に教えて頂きました。
実際に運転台でブレーキ弁を操作して、
「締まる・緩む」の差を目視します。
…Yくん一家は恐らくお父さんが鉄ヲタ
なんでしょう。お母さん(一番手前)は
明らかに退屈そうでしたが…家族で来ると
1人ぐらいは興味がなくて当たり前か。
午後からは、体験運転が2回目以上となる
「マスターコース」の参加者さんが加わります。
という事で、私とYくん一家、マスターコースの方(平日なので今日は
お2人だけのようですが)でいよいよ体験運転の始まりです。…訊くと
明日(土曜日)は定員一杯との事…ホントに平日バンザイですね。
…まずは車内の実景撮影からですが、このデハニ50型は製造が何と
昭和4年。そもそも「電車」という乗り物が、まだまだ黎明期の時代の
モノじゃないんでしょうか?勿論「吊掛式」です。
吊り革の広告を見たら、いつの時代か分からんけど「一畑パーク」
なんて遊園地も存在したようです。
その他にも、随所に古き良き時代の風情が感じられる車内ですね。
映画の中では「内装が木製だから、大工さんが修理するんだよ。」
みたいなハナシが出てきましたが、ホントに納得ですわ。
所で私は前回の社員旅行の「服装に関する
残念感」 を教訓として、白シャツとネクタイ
(JR東日本)は用意してきました。
…あんまり写りませんが、スラックスも国鉄
の乗務員用です。
制帽も一応は持参しましたが「ソノぐらいは
貸してくれるだろう」という事で車内に入ると、
やはり色々と用意されてました。
…私は毎度、一番大きいサイズなのよね。
女性用の丸っこいのもありましたが、コレは
Yくんのお婆ちゃんが使用。
ちなにみにデハニ53のロングシートは、
お座敷電車に改造されていた状態から
映画の大道具スタッフが再現したモノ
らしいです。
…「形だけ」なので木のベンチに
モケットの表層だけを張ったような
感じで、スプリングは入ってません。
「体験者の声」みたいなノートもあった
んですが、読んでるヒマ無かったな。
最初に聞いてたハナシでは、まずは講師の先生がお手本を見せる
という段取りでしたが、今日のマスターコースのお2人は超ベテランだと
言う事で、いきなりソノお2人からスタートしてしまいました。
…たかやすさんが「一畑はカナリ放任主義ですよ」と言ってた事情が
分かったような。
では、そのベテランさんの「お手本」を見学しつつ、コースの状況を
アタマに入れておきましょう。
距離は約120m。殆どが直線で、向こうに見える貨物用みたいなホーム
の所まで行きます。発車合図をしたらノッチを入れ、×印の所まで加速
して、時速約15kmになる…。
そして「B」の標識の地点からブレーキ操作を始め、軌道上にある白い
停止目標の所で停車。…帰りは同じ線路を出発した車庫の方へ戻ります。
というのを2往復、合計4回運転出来るのですが…直前になって運転席
に吊ってある「安全うんこ」を見つけてしまい、気が散って仕方ナイ。
…小さな会社ですから、女子社員の方がチマチマ縫ったんでしょうか?
では長らく引っ張りましたが、いよいよ私が運転する番です。大丈夫かな?
…まず運転席ですが、前後がカナリ狭いです。
私が太いというだけではナイような
気がしますが…戦前の運転士さんは
みんな小柄だったんでしょうか?
ともあれ、カッコだけは決まってます
でしょ?
事前の講習で聴いたハナシによると、
デハニ50のブレーキには「重なり位置」
というモノが存在します。
ブレーキを緩めて加速したら、すぐに
コノ「重なり位置」に持っていく。
だから開放の位置で走ってる時間は
殆どありません。
ハンドルがコノ位置にあると、当然に
ブレーキはユルく掛かった状態のまま
でしょうから、速度が早く落ちるんです。
(※逆に制動→重なり…と動かすと、
ブレーキが徐々に緩んでいくらしい。)
…たかやっしーが言ってた特異性ってコレの事ですか!
とか何とかアタマで考えても仕方ナイので、とにかく走らせてみます。
私とYくんのお父さん(当人は膝の上)、マスターコースのお2人で交互に
コースを2往復ずつしました。
加速はまぁ簡単なんですよ。低速ながら、吊掛モーターの低い音が
響いて心地イイ瞬間ですね。…で問題はブレーキです。
その「重なり位置」を中心にして時計方向が緩め、反時計方向が制動
なので、微調整を繰り返して停止位置に着けるのですが、やはり気動車
とは感覚が違いました。
講師の先生からは「圧力計を見て調整するように」と言われましたが、
コレも結構な驚きと言いますか…実際の運転では、見るべきはメーター
でなく前方だと思うんですよね。まぁ初心者向けだからの事でしょうが。
4回目になると、カナリ思った通りに動かせるようになり、「かなり上手く
なりましたよ」という評価を頂きしまたが、そんなタイミングで終って
しまうのがマーフィーの法則でしょう。
あとの時間はマスターコースの常連さんの
模範演技を見てたのですが、同乗してる
アテンダントのお姉さんが突然、「じゃ、計測
行きまーす」と宣言。
…ぇ、何するの?と思ったら、金属製の棒
やら巻尺を取り出して、停止位置を測ってる
んですよ。あと、金属製の重りみたいなのを
運転席に立てて、制動時のショックを計る
アレも出てきました。
マスターコースは、5回目以降からこのような
オプションが付くんだそうな。
…空き時間に、その常連さんの1人に少しハナシを訊いたのですが、
彼は東京から来た人で、今回が194回目の参加になるそうです。
回数によって、車庫内に名前のプレートが掲示されたり、特製の名札
が貰えたりもするとか…初心者の私にはイキナリ驚かされる人でした。
初体験の私とYくん一家は、自分の出番が終ったら下車したのですが、
マスターコースは人数に余裕があれば追加も出来るようで、
お2人とも「どうします?」「じゃ追加で」って感じて引き続き運転。
…コレはもう、釣り堀とかゴルフの打ちっぱなしぐらいの感覚なのかも
知れませんよね。私が駅に戻っても、デハニ50はひたすらウロウロ。
駅の方から見るとこんな感じです。
という事で無事に体験運転が終わり、後日になって記念写真と修了証
が郵送されてきました。
…すいません、私も完全に「あっち側」の人にしか見えないですよね。
最初に顔写真を撮る時に、持参した制帽を着用したので、修了証も
そんな感じです。
本来、1日コースは15時までの予定ですが、人数が少ないので13時半
には終ってしまいました。ともあれ、貴重な車両を運転出来る機会
だったので、ホントにいい経験になりました。
「自分の仕切りで体験運転に参加」という目標も達成出来ましたよ。
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