2015年6月の事。その日は富山地鉄と黒部峡谷鉄道の乗り潰しという
事で、宇奈月温泉までやってきました。

温泉地ですから、噴水も温泉だし足湯などもあります。
そして100mほど歩くと、黒部峡谷鉄道の宇奈月駅がありました。
…隣り合うのに微妙に名前が違うのね。

周知の通りコノ鉄道は、元々はダム工事や発電所の建設のために敷設
された軽便鉄道を観光客向けに開放したモノです。
…すっかりキレイな駅で、分かりにくい場所にあるアーチ橋とトロッコの
オブジェも可愛いもんですが、昔は「命の保証は致しません」みたいな
物騒な説明を付けて、お客を便乗させてたそうな。

…駅というより、銀行の窓口みたいなお洒落なカウンターですね。
私はネットが乗車券を予約してきたので、ココで引き換えます。
終点の欅平まで、幾つかの駅がありますが、一般客が乗降出来るのは
両終点を含めて4駅のみ。他は関係者専用の駅なんだそうです。
…ヨコミ的には、こういう駅はどんな扱いなんでしょ?
スルーしてOKなのか、無理を言って下車させて貰うのか?
そんな感じで改札を通りますが、ココに列車の編成案内の図があります。
客車は6両又は7両ずつの編成単位に
なってると思われ、ソレを最大で2本、
13両まで連結出来るようですね。
…で2編成になると機関車が重連に
なる模様です。
客車は普通・特別・リラックスと3種類
があり、コレは後で詳しくやりますが、
ランプが点等している私が乗る列車…
はオール普通客車の列車なんですね。

構内は車庫も兼ねてるようなので、行き止まりの側には多くの客車や
機関車が居て、活気がありました。
ソノ電気機関車ですが…ちっさ!
今まで写真でした見た事はなく、ナローゲージの鉄道だとは居え、
もう少し柄の大きいモノを想像してましたが、例えば北勢線の電車とか、
アレより更に小さい感じです。
…脇に立ってる乗務員さんと比べても分かると思いますが。
今でも専用鉄道の頃の性格が強いのか、資材運搬の貨物列車とか職員
輸送専用の列車が多く運転されてる感じですが…峡谷美人って何?
そして、いよいよ自分が乗る列車が入ってきましたが…
元は工事用の軽便鉄道だっただけに、ホントに小さなサイズの列車です。
…今も残るナローゲージの路線として、三岐鉄道の北勢線などが
ありますが、アレぐらいのモノを想像してたら大きな間違いでした。
キツい勾配を登りますから、機関車の砂箱がデカいのが特徴ですね。
客車の屋根は私の身長より少し低いぐらい。ホントにミニサイズです。
遊園地の乗り物とか、そんな感じのをイメージして頂ければイイかと。
で連結器は、コレまた軽便鉄道にありがちな、リングにピンを差し込む
感じのやつ…正式名称は知りません。ってか、実物を見たのは初めて。
…と、どうでもイイ話ですが、私の後に写っちゃったカップルさん、
中国人だと思われますが、ワキガが臭くて参りました。
そして切符の販売窓口にあった案内により
ますと、客車には3つのタイプがあるようです。
先述の通りですが普通・特別・リラックスとあり、
普通以外はそれぞれに追加料金が掛かるん
ですよ。要するに
普通…普通車 特別…グリーン車
リラックス…グランクラス
みたいなもんかしら?ハナシは前後しますが、
対向列車で見たそれぞれの実物を紹介して
おきますと…

左がリラックス車両、転換クロスシートです。
で右が特別車両、こちらは固定式のクロスシート。
何れもちゃんと外壁とドアがあって、寒い時期には暖房が入るらしい。
…鉄道車両として当たり前な設備が特別料金扱いだから笑えます。
ネットで乗車券を予約する際に、客車のグレードも指定出来る仕組み
になってるのですが、私が乗る列車は何故か、オール普通客車で
選択の余地がありませんでした。…あっても安いやつを選ぶんですが。

普通客車は外壁なしドアなし、当然エアコンなし、シートは単なるベンチ!
…台枠が低くなってる部分を跨いで乗るしかありません。
走行中は鎖を掛け渡すのですが、ホントに遊園地の豆汽車みたいですね。

特殊な鉄道で私にとっても、見た事
のナイ物の連続でして…そんな
スリリングな列車で、片道約1時間半の
黒部峡谷の旅に出発です。
切符はネットで予約して銀行振込して
あるのを、窓口で引き換えてきました。
…往復の乗車券と、指定券が上下一枚
ずつあります。
号車が指定されるだけでソノ中では自由席なのですが、うっかり中国人
の後(風下)に座っちゃったもんで…エライ目に遭いました。
しかし「窓なし」て…以前に乗ったフェリーの個室の「窓なし」とは
丸っきり意味が違いますね。
「窓から手や顔を出さないように」と注意されても、ドコが窓なんだか
よく分からないのが事実。まぁ屁理屈ではありますが。

という事で発車してすぐに、まず黒部川を渡ります。
眼下に見えるアーチ橋も、元々は線路だったモノで(恐らく写真で見た
記憶にあるのはこっち)、現在は遊歩道として整備されてるそうな。

…ちょっと曇り気味ではありますが、次に来るのが宇奈月湖。
最も下流にあるダム湖という事になるのかな?

上の看板の絵にも描かれているコノ建物
も発電所の施設だそうな。…湖上に
浮かぶお城のイメージなんですって。
そして、本線から分岐してトロッコの
引込線が延びています。ゲージが小さく
車両長も短いから、カーブの半径も
小さく出来るんでしょう。
…元々が「それ用」の鉄道ですしね。
そんな感じで車内に流れている音声ガイドは、ご当地富山県出身だという
女優の室井滋さんの声です。
同じく富山県の万葉線も確か、立川志の輔さんのアナウンスでしたよね。

ダム湖が出来た事で、山から山へ猿が移動出来なくなって困るだろう。
…という事で作られた猿専用の吊橋なんてのもあります。
なかなか考えられたモノですが、猿用なので欄干(手摺)がありません。
「猿だから要らないんじゃね?」と決めたのは誰なのか?
という事で、見える風景の全てが珍しく感じるトロッコ電車の旅、
相変わらず滅多に見れない車窓風景が続いておりますが…

線路から眼下に見下ろす位置に、何やら赤い布を纏った石がありまして
天然で仏像に見えるから「仏石」と言うそうな。
…そうかなあ?
仏像(お地蔵様とか?)と言うよりはサンタクロースみたいですが。

線路と平行する殆どの場所で、このような四角い穴の開いた土手状の
建造物が見られます。
…コレは冬季に路線が運休した時に、関係者の方が歩いて移動する
ための歩道なんだそうで、穴は空気穴ですね。
恐らくは、とんでもナイ量の雪が積もるから、普通に徒歩では行き来
出来なくなるんでしょう。トンネル内などはそこを歩けばイイから、
ソレ以外の場所にあって、中で合流してたりします。
…終点の欅平ので約20キロ。休みなく歩いて6時間だそうですよ。

途中駅のうち一般客が利用出来るのは黒薙と鐘釣の2箇所。
春から夏の段階的に「ココまで行ける」という時期を経て夏から秋の
最盛期だけ終点まで行けるという運転形態です。
…他の駅は関係者用と言うか、信号場みたいな感じですかね?
旅客列車以外にも短編成の工事列車に結構出会います。…種類で言うと
混合列車かな。

段々と標高が上がり、大きなダムなども見えるようになってきました。
曇りがちなお天気だから、山が水墨画みたいです。
…ってか、夏場だと思って普通に半袖で来たら、コレが結構寒いんです!
どうもココで風邪をひいた気がするんですが。その時は気付かなかったね。

続いて列車は猫又という駅に到着しました。
…猫又。
全国に猫が居る駅というのは結構ありますが、
名前に「猫」が付く駅というのは結局ココだけ
なんですかね?
一般的に「猫又」と言うと化け猫みたいな妖怪
の事ですが…妖怪の名前が素で(境線みたいな
強引なハナシでなく)付いてるというのも珍しい
かな。…一般の乗降は出来ませんが何とか
写真だけは押さえました。

その猫又駅の近くにあるのが、黒部川の第二発電所なんですが、戦前の
建築で、当時としてはカナリ近代的でカッコいい建物だったそうな。
…で、やっぱりトロッコの支線が延びてますね。コレが本来の使い方です。

この辺りから更に勾配がキツくなり、続いて鐘釣駅に到着。
ココは近くに露天風呂などがあって、一般の乗客も乗降可能な駅です。
…この駅の配線構造と言うか、列車の動きが独特で面白いんです。

行き違いをするための「有効長」が列車全体の長さに満たないので、
ソレより先の引込線に一旦先頭を突っ込んでおいて、対向列車が
通り過ぎてからバックしてポイントを切り替え発車するんです。
(※画像は帰りの列車)
…真相はどっちにあるんでしょ?
元から線路が短いというより、列車を増結しすぎた結果このように
せざるを得なくなったような気がするんですが。

標高の高さゆえ、万年雪なども見られるようになった頃、 ようやく
終点の欅平に到着しました。

終点の欅平に到着した列車は、折り返しに備えて「機回し」の作業が
行われています。…そしてまた、作業用の列車を通すために引込線へ。

実際はココから、一般営業をしていない専用線があり、専用線とソノ先の
地下トンネルを介して黒部湖へと繋がっています。
…先日行ったばかりの黒部湖ですが、地図で見る分には意外と近い感じ。
実際ココからハイキングと言うか登山と言うかで、徒歩で抜ける事も可能
だとか。…私には無理ですが。
でもまあ、折角なので改札を抜けて駅舎の周辺だけは見てみましょう。

…何だか×印だらけですねぇ。
事前に案内で「天候などによって見れない所もあるので注意」とは
聞いてましたが、そんなに悪天候でもナイのにな。
ついでの事に、食堂や売店も「そろそろ店仕舞い」な雰囲気でした。
山の夕暮れは早いですね。…まだ3時過ぎなんですが。

仕方がナイので、早々に引き返します。
印象に残ったのは、この改札用の鋏かなあ。市販のミント菓子の空き缶を
上手く合体させて、切りクズが散らからないように工夫されていました。
…帰路は省略しますが、来る時に撮り損ねた風景の色々を撮り直して
たら、意外と時間は早く感じました。
ココだけに限らず、折り返ししか出来ない区間ではよく使う手ですが。
という事で、再びトロッコ電車に乗り宇奈月温泉まで下山。富山地鉄で
新黒部へと向かい、宿泊地の富山市まで戻りました。
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